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  • 転勤命令はいつでも絶対…!?

    2012.03.30

    Ⅰ.今回の課題

    飲食店の開店コンサルティングを主業としているS社は、全国に支店を持っており、社員の選考時には転勤が可能かどうかを採用の条件のひとつとしていました。
    入社時には転勤命令には必ず従う旨の労働契約を締結しており、会社も当然のように一方的に転勤命令を行っておりました。
    しかし、コンサルタント部門のエースとして社内でも抜群の評価を得ていたA課長に、東京本店から営業成績が苦戦中の大阪支店への転勤を一方的に通告した際、A課長より「息子が重篤な病気で療養中なので、家族がそばにいる必要があり、転勤は受け入れられない」との回答が…。

    Ⅱ.経過報告

    A課長は、育児介護休業法26条「事業主は、その雇用する労働者の配置の変更で就業の場所の変更を伴うものをしようとする場合において、その就業の場所の変更により就業しつつその子の養育又は家族の介護を行うことが困難となることとなる労働者がいるときは、当該労働者の子の養育又は家族の介護の状況に配慮しなければならない」の規定を取り上げ、会社には配慮義務があると主張していました。
    会社は、当初から転勤が必要なことを前提に労働契約していると譲らず、議論は平行線のままでした。

    Ⅲ.最終結果

    最初は強気の姿勢を崩さなかった会社側でしたが、過去の判例にて、労働契約などで転勤命令に従うことを了承していても、入社後事情が変わって本人が拒んでいるのに一方的に命令を押し付けようとしたところ権利の濫用として無効とされたケースがあることを知り大慌て。
    すぐに転勤命令を取り消したものの、A課長は会社の誠意のない対応に一気にモチベーションを下げてしまい、数カ月後には会社を退職してしまったのです。
    社長は優秀な社員を失い後悔の嵐でした…。

    Ⅳ.今回の課題への対策とポイント

    会社の転勤命令は、就業規則に明確に規定されていれば、本来は有効なはずです。
    しかし、育児介護休業法では、子どもの養育や家族の介護で必要があれば、その事情を十分に配慮することを義務付けています。

    ただし過去の判例でも、同条の「配慮」については、必ずしも「転勤をさせてはいけない」といった義務を事業主に求めるものではありません。
    積極的に負担を軽減する措置を取らなくてはいけないということでもありません。
    今回のケースでも、転勤を命じたことには問題がありません。
    「転勤命令を当然として労働者に押しつけるような態度を一貫して取るような場合は、同条の趣旨に反し、その転勤命令が権利の濫用として無効になることがあると解するのが相当である。」とされます。

    会社がA課長を転勤させようとした際、就業規則や労働契約があるからと一方的にするのではなく、少なくともA課長が配置転換を拒む態度を示したときに、育児の負担がどの程度のものであるか、会社の対応でその負担を軽減する方法があるのかを十分に話し合うなど、真摯に対応すべきだったと思います。

    育児介護休業法は労働者の保護が手厚く、事業主にはなかなか厄介な法律ですが、まずはしっかりと社員の話しを聞く態度を示すことで、社員からの十分な譲歩を得られるようにしたいものです。

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