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  • ・退職者に賞与は支払わなければならないか?

    2011.11.01

    Ⅰ.今回の課題

    食品製造を手掛けるD社は創業以来、堅実に経営を続けて、毎年の定期昇給や賞与の支払いを滞ることなく行ってきまして。今年の売上も厳しい中、経営者は資金繰りを行い、一部を銀行にて借り入れるなどして賞与の原資を確保するなど、涙ぐましい努力をいたのです。そんな中、賞与の支払い日前に退職したA元社員から、賞与の支払時期に請求書面が届き、役員はびっくりしてしまいました。

    Ⅱ.経過報告

    その書面には「賞与の算定対象期間に在籍していたのだから、その期間分は確定賞与として支払ってもらう権利がある」とあったのです。確かにこれまでD社では、賞与の支払い期間(半年毎)に在籍していた社員にその期間に応じた賞与を支給していました。(基本給×在籍1カ月当たり0.25月) 通常は支給日には基本給の1.5か月分が支払われることになっており、今回のA氏も在籍時の基本給を元に請求額を算定していました。

    Ⅲ.最終結果

    D社の就業規則の中の賃金規程には、「賞与は算定対象期間に応じて支給する」といった文言があるだけで、支払日の要件や支給対象者などの規定がありませんでした。顧問弁護士に相談したところ、債権として認めざるを得ないということで、結果として、一定額を支払うことになったのです。

    Ⅳ.今回の課題への対策とポイント

    本来、賞与とは行政解釈(昭22.9.13発基17号)では「賞与は定期または臨時に、原則として労働者の勤務成績に応じて支給されるものであって、その支給額が予め確定されていないものをいい、定期的に支給されかつその支給額が確定しているものは、名称の如何にかかわらず賞与とは見なされない」。とあります。 一般的に賞与とは、一定期間の会社業績や本人の実績に応じて支給すべきものであり、通常の賃金とは分けて考えるべきものです。(弊社にて就業規則を作成する場合は、賃金規程と賞与規程を分けております。) ところが現実には、毎回一定額を保証的に支払い、”生活給”の一部となっている場合も多々みられます。(ローンでのボーナス返済を組んでいる場合が好例でしょう。)

    D社の場合においても、借入れまでして支払う準備をしていたので、確定賞与=後払いの賃金としてみなされることになったのです。結果として、基本給の1.5か月分が既得権として全社員に支払うべき債権として確定してしまったと言えます。
    またD社の規定には、支払日も対象者も明確な記載がありませんでした。こういった点を考慮し、必要事項を記載しておくべきなのです。ただし、注意が必要な点としては、支払日を明記した場合、「その時点での在籍者に限る」といった対象者の要件も明確にしておかなければなりません。支給日に在籍していなければ支給対象から除外できるとの判例も出ております。(大和銀行事件・最高裁昭和57年10月7日判決・判時1061-118)
    またその他の賞与の支払要件として、将来にわたりその会社に所属し、職務に従事する者の貢献を期待分も含む場合、「支給算定対象期間以降に在籍する者でも、支給日現在において役務の提供がなされない場合は、賞与支給額を減算することがある。」といった記載を検討すべきでしょう。

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