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  • ・吸収合併時の不利益な条件変更の方法は?

    2011.05.02

    Ⅰ.今回の課題

    各種保険の代理店を主業務とするM社は、数社からなるグループ企業であり、これまで個人や法人を含め幾つかの合併を経て今に至っています。この度、新たな企業(S社)を吸収合併することになりましたが、S社はM社よりも給与水準が高く、M社の経営陣は合併と同時に就業規則を改定し給与の引き下げを行いました。

    Ⅱ.経過報告と対策

    ところが吸収されたS社の社員から不満が噴出し、一方的な不利益変更は不当行為だと訴えられそうな事態になってしまったのです。あわてたM社の経営陣は、問題を収めるため、とりあえず元の水準に引き上げることなどで対応しましたが、今度は元のM社の社員から不満が出る状況になってしまいました。

    Ⅲ.最終結果

    結局、なし崩し的にS社を合併したM社でしたが、賃金体系などの労働条件が会社ごとで異なるなど、いびつな形になってしまったのです。しかも退職金制度も異なっていたため、それぞれの会社ごとでの管理が必要となるなど、事務的な作業も増えてしまう結果になったのです。

    Ⅳ.今回の課題への対策とポイント

    合併をされる場合、原則として、消滅会社の就業規則等の労働条件は、存続会社にそのまま引き継がれなければなりません。今回の場合も、何の対策も採らなければ、M社はS社の条件を承継したうえで、合併を行い社員の雇用をしなければなりません。
    ただし、一定の合理的な要件の元では、就業規則の不利益変更も認められています。それではその条件とはどのようなものでしょうか、最高裁の判例では、以下の要件を満たすこととされています。

    ①就業規則の変更により、労働者が被る不利益の程度はどうか?
    ②使用者側に変更の必要性があるか、またその必要度はどの程度のものか?
    ③変更後の就業規則の内容自体の相当性はどうか?
    ④代償措置その他の関連する労働条件の改善状況は?
    ⑤労働組合や労働者などとの交渉は行ったか、またその対応は適切か?

    上記の点について、社会的な一般状況を総合的に考慮して、その合理性を判断すべきとされています。
    また「特に賃金や退職金など労働者にとって重要な権利、労働条件に関し実質的な不利益を及ぼす就業規則の作成または変更については、当該条項が、そのような不利益を労働者に法的に受忍させることを許容することができるだけ高度の必要性に基づいた合理的な内容のものである」ことを要するとしています。
    今回の場合、M社の経営陣は上記の点を加味せず、一方的な不利益な改定を行おうとしたものであり、もし労働争議となった場合は、勝てる見込みはありません。
    とはいえ、事前に何らかの手立てを講じておけば、既述のような状況は回避できたのではないかと思います。
    今後、吸収合併をお考えの企業様は、以上の点を注意し、対処法のご検討をお勧めします。

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