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  • ・労働時間の適正な管理方法は?

    2011.10.01

    Ⅰ.今回の課題

    小売業を営むT社は、社員のみならずその家族を大事にするという経営方針で事業運営を行っています。創業当時からの理念のもと、社員にはそれぞれの扶養家族に応じた手当を支給していました。通常は、会社に扶養家族の有無を申告し、その人数により所定の額を支給しているのですが、ある時、長年勤務している社員のA氏が「別居」状態にあることが発覚したのです。

    Ⅱ.経過報告

    T社の規則では、家族手当の支給対象者は、扶養しているのみならず「同居」をしていることが要件だったのですが、A氏はそのことを知らなかったとのことです。とはいえ、規定違反での受給は事実であり、過去に遡っての請求を行うということを、社長から本人に伝えたのです。経営者側としては民法における「不当利得の返還請求権」を行使するということで、別居を始めたという3年前からの金額(合計72万円)をA氏に分割で払うように求めました。

    Ⅲ.最終結果

    この決定に納得ができないA氏は、規則を周知していなかった会社に落ち度があると訴え、返還に応じようとしませんでした。泥仕合の様相を呈していたところ、番頭的な部長になだめられ、しぶしぶ請求の半額を返金することで、折り合いを付けたのですが、その後もA氏は事あるごとに恨み節を他の社員に伝えるなど、険悪な結果になってしまったのです。

    Ⅳ.今回の課題への対策とポイント

    今回の事案でのポイントは以下の3点になります。1つずつ内容をご確認ください。

    ①過剰に払われた手当は、「返還する義務」があるのか
    上記にもありますが、民法 第703条では「法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。」とあり、“不当利得”が成立すると、受益者は、損失者に対して利得を返還する義務を負うことになります。ちなみにこの返還義務に対する請求権は、最長で「10年」まで遡ることができます。

    ②就業規則またはその他の規程の「周知」はできているか
    今回の家族手当のような「属人的な給与」の場合も、労働条件の一種とされ、その支給の根拠を明示しておく必要があります。いくら規定を設けても、その内容が周知されていなければ、原則としては効果が無いとされます。もし法的に効果が無いと判断された場合、そもそもの返還請求権が生じることもなく、過誤の支給がなされていたとしても、返還義務を負わせることが困難となるでしょう。今回の事例も、もし労働者が強く拒否した場合、返還を求めることは難しいと考えられます。

    ③各種の手当の支給基準および金額は明確になっているか
    属人的な給与であっても、その基準を明確にしていなければ、何かと問題となります。例えば、家族手当の場合、男性社員と女性社員とで支給額に差を設けると、労基法 第4条に定める「男女同一賃金の原則」に反することになります。また通勤手当という名目であっても、根拠無く「全員一律」の金額を非課税給与としていた場合、“課税対象”となりかねませんので注意が必要でしょう。

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