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  • ■退職時に資格取得費用の弁済はできる?

    2011.03.17

    Ⅰ.今回の課題

    輸送事業を行うS運送は小型から大型までの自動車を用いています。従業員は委託者も含め数十名になっていますが、ほとんどが他社からの渡り組です。ただその中には業務で必要な免許を持たず入社する者もあり、会社は必要に応じて費用を負担し資格を取らせていました。ある時、入社して間もなく大型免許を取らせた従業員がすぐに退社したため、S社はその費用の返済を求めた所、不当請求ということで逆に訴えられる事態となりました。

    Ⅱ.経過報告

    S運送は新たに資格を取らせる場合は、一定期間を在職することを条件として誓約書を出させていたました。今回もその期限に満たない退社であったため、従業員に賠償請求を行ったのです。ところがその内容が不法行為であるということで問題となり、双方での話し合いを持つことになりました。

    Ⅲ.最終結果

    状況を確認すると、免許の取得は本人からの申し出ではなく、会社命令でのものであり、この場合は労働基準法で定める「賠償予定の禁止」に当たると判断されました。そこでS運送は賠償請求を引下げ、本人の希望する日をもって退職することで合意に至ったのです。

    Ⅳ.今回の課題への対策とポイント

    民法上、損害賠償を求めることは可能です。例えば、相手側の債務不履行に対してならば、賠償額をあらかじめ合意しておくことが可能です。(ちなみに不法行為に当たる場合は、その程度に応じた慰謝料を請求することができます。)

    しかしながら、既述のように労働契約上、あらかじめ賠償額等を決めておくことはできません。

    「(参考)第16条 使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。」

    この内容は退職後も本人の財産になる免許等であっても、会社の業務で必要とされた資格であれば、原則としてその費用は会社が負担すべきであり、取得に要する時間は労働時間とされます。

    ではどのような場合に、費用負担を求めることができるのでしょうか?基本的には次の点が必要となります。これらの前提がなければ、賠償を求める契約は無効とされる可能性が高いでしょう。

    ①会社からの業務命令ではないこと

    ②本人が取得の判断ができること

    ③通常の条件以上の便宜を図っていること。

    具体的に、

    ①に関しては、取得する資格が業務に付随するもので、それが無ければ仕事にならないといった類の免許は会社負担となります。

    ②については、資格取得はあくまで「自主性」によるものとし、取るか否かを本人の判断に委ねておくことが必要です。

    ③に関しては、労働契約とは別に、業務外の研修等で要した費用は、消費貸借契約として返還を認められる場合もあります。とはいえ、やはり業務に基づいて費用を弁済させる際は、十分な注意が必要であると認識すべきでしょう。

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